ヴィンテージワインのように熟成されて更に芳しい、このような関係を築けられたらいい。結婚を機に二人で新築マンションを購入した。そしてこの記念に同じ年のボルドー産の赤ワインを二人で買い求めた。まだ若いこのワインも、熟成されて、そのうち素晴らしく薫り高い、深みの増した、複雑で官能的なワインへと変わっていくだろう。10年後このワインを開けよう、そう約束してワインセラーの奥に眠らせた。10年後、この家にまだ住んでいるだろうか。今はまだ新築マンションだが、そのうちこの家も時を刻んでいく。部屋の真っ白な壁も薄ぼんやりベージュがかってくるのかもしれない。このカウチソファーもへたってくるに違いない。家電もどれかは故障して買い替えているだろう。あっという間の10年かもしれない。二人の歴史をこの家はじっと見守ってくれるに違いない。些細な喧嘩も、すれ違いの毎日も、いろいろな事情を乗り越えた10年後、ワインのように熟成された関係でいられるだろうか。どちらかが出て行って1人でこのマンションに住んでいるかもしれない。そのときは一人でワインをあけよう。ひとりではなく10年前新築マンションだったこの家と一緒に、共に過ごした10年の思い出に浸ろう。中古になった家もいい。過ごしてきた時が素晴らしいものならば素敵な家に、この先もなっていくだろう。けれど、私には広く、持て余している。ここでもう熟するものはない。また新築マンションを探そう。そしてまた、ともに熟成されるワインを買おう。10年とはいわず、15年後やっと飲み頃を迎えるようなワインを買い求めよう。